
一人きりになった時、或いは孤独を感じた時……前に進む力が失われてその場に留まり動けなくなってしまうのは、エンバー族に限らず人間にも身に覚えがあることだと思います。エンバー族とは『The Last Campfire』に登場する、全身にフード状の服を被り目元に白く光る目があり体は小柄な一族です。どうやらエンバーの命、もとい生きる為の活力は希望の灯火で出来ているのか、目指す故郷もキャンプファイヤーであるようです。しかし、途中で希望を失った者達はフォーローンと呼ばれる迷子になり、石像の様に固まって動かなくなってしまいます。今作はエンバー族の主人公が故郷へと繋がる道を探す旅の道すがらフォーローン達を助けていく話です。
主にフォーローンの心の灯火を手に入れる為にパズルを解くのですが、その過程が心の複雑さを表していてゲームシステムとマッチしていてとても趣深いですね。エンバー族の間では心の迷宮が具現化出来るようです。試行錯誤すれば解けるレベルで丁度良い難易度。世界観とBGMも良くて、パズルに考え込んでる間に良い意味で凄く眠くなりました。眠ってるフォーローン達に激しく共感。複雑な物事を前に迷子になる理由は人それぞれなんだなあとしみじみ。笛を使って物を動かしたりボートを漕いだりアクションも細かくて面白いし、滑り台を滑った主人公の服が一定時間泥だらけになるのも細かくて可愛い。

道中で出会う人物達や関係などが童話の様で懐かしい気持ちになるのも大きな魅力。動物達の性格は『不思議の国のアリス』、話のオチは『オズの魔法使い』を彷彿とさせます。何を食べても満足出来なかった豚と何を作っても満足出来なかった亀が主人公によって満たされて先に進めるのが面白い。途中鳥の王が出てきて希望を持つなと主人公を諫めてきたり、大きな蛇が洞窟の中を蠢いていたりして自分よりも強大な存在に恐怖を覚える主人公も伝わってきて、意外にも美しい風景以上に切ない言葉が重要に感じられます。一つ一つがとても丁寧なんですよね……不思議で温かい夢のような空間かと思えば、フォーローンの亡骸がそこかしこに転がっていたり、寂しい怖さと温かい不思議さの存在が確かに感じられる作り込み。

最後はフォーローンを全員助けて無事旅を終えられたわけですが、フォーローンを全員助けなくても実は道を進めるらしくて、その場合最後が少し違うようです。助けた場合とても賑やかな終わりになったので良かったね~!!と盛り上がりました。主人公の目的は故郷へと辿り着く事でしたが、それ以上に孤独な人々を助けて自らも孤独から立ち直り皆と共に進むというのが暗黙のテーマだと思うので良かった~~中には話しかけられるにも関わらず救えないフォーローン達が居るのも個性があって考えさせられる。助けを必要としないと助けられないんだよね……そうだね……
手紙は全部集められなかったのと亡骸に花を供えられなかったので、それもまた今度道に迷ったら試してみたい。あとボートを作ってくれる建築士ロボット君が好きです。黄色のアヒルボート!