
これは『不思議の国のアリス』の世界のお話。かと思えば物語は平凡で現代的な学園生活から始まります。主人公の名前は水無瀬亜理紗。おっとりした風に見えて、明るく元気でお茶目な女の子。誕生日を目前にしてルンルン気分で幸せな日常を楽しむ亜理紗でしたが、突然不思議の国に飛ばされて亜理紗によく似た別の女の子「アリス」に勘違いされて…!?という流れで始まります。
女性向け18禁乙女ゲームではありますがアプリ版では17禁(CV無し)になったりしてます。とても可愛いキャラデザとイラストで気になり続けて早幾年、可愛らしくも生々しい怖さや恋愛がいっぱいで楽しかったです。真相は大分簡単で文章を繰り返し読むことも多いですがアリスらしいナンセンスさや童話を意識した文章が素敵で、世界観を楽しめれば最後まで『トリック・オア・アリス』を冒険しきれるかと思います。
私の感想としては……イカれた帽子屋クロノが!!可愛い!!!に尽きる。可愛い。アリスがいなくなった不思議の国では彼が仮の主人公として威張り散らしていて『トリック・オア・アリス』の完璧な悪役。一応クロノENDはあるのですがそう都合よくラブラブになるものではなく、アリスにはデレません。そこがいい!!いや、やっぱもうちょっとデレてほしい…と苦悩に苛まれますがアリスと二人で黒うさぎを取り合ってる様子が最高だと思います。もう一人のヒロイン(男)ですね。
18禁要素はぼかしたメインキャラ&ルートへの簡単所感~!攻略順!
黒谷南緒/チェシャ→気紛れでフレンドリー、掴みどころのない態度であっちこっちふらふらして色々様子を見たりアリスをからかうのが趣味。チェシャ猫なので登場人物達の中でもかなり立ち回りが上手い。すぐ脱いでアリスに怒られるくだりがお約束。その軽薄な態度が癪に障るのか黒うさぎに嫌われているため、チェシャルートで暴れる黒うさぎがヤバかったですね。客観的に見ても中々に頼れるナイスガイなので多分十割嫉妬。ヤバ。不思議の国面子でパートナーに選ぶなら一番に推奨する素敵な猫ちゃん。
如月蓮/ラウンド→ものすごくポジティブで明るくのんき。不思議の国では夜中の3時間しか起きていられない眠りネズミだが、寝てる時にもクロノのお茶会に参加しているからかクロノのことも慕っている。学園の世界では起きていられる喜びもあってか遠慮なく亜理紗にじゃれつく(というかそうでもしないと影の薄さが大変なことになるからだと思われる)クロノが黒うさぎ以外にデレた尊い存在。お茶会フレンドありがとう、なんでもない日が一番だね。
上条遠夜/シャドウ→ふわふわした雰囲気の双子のお兄ちゃん。アリスのことが大好き。公式サイトアリスページの矢印ボイスで唯一好きと言っている。重い。ふわふわパンケーキの様な雰囲気が突然写実的な重みを増す。亜理紗よりアリスの方を強調するのもわかる。声の切り替えが本当に最高で全ルート中一番興奮して情緒が暴走しました。恋の醜さが詰まってる~!!好い…………こんな美少年フェイスで無様な姿をさらし続けるその執念と闇の強さ、凄かった。
上条朝霧/ライト→ぶっきらぼうな態度の双子の弟。名前から察せられると思いますが兄と違って大変良い子。良い子過ぎて兄の言いなりなとこも。頬に傷を入れられたことでアリスに嫌われてると思い込んでますが、そこのところ黒うさぎの意図がわからなくてもやる。意外とかなりがっつくタイプなのでシャドウの嫉妬が大変なことになったのはそれもあると思う。チェシャに対する黒うさぎと違ってシャドウはライトのことも好きなのもあって、しっかり三角関係エンドも存在。
水無瀬静久/黒うさぎ→亜理紗の兄で不思議の国の管理人。権力は無いのに権限が強い。もっと哀れな感じかと思えば驚くほどしたたか。元から彼女をアリスとして戻すつもり皆無なんだろうな……タイムと真逆で……とんでもないムッツリスケベ。静かに逡巡するとこ含めてウサギっぽさはある。黒うさぎの学園世界ハッピーエンドが完全に『トリック・オア・アリス』のトリート部分だったので、黒うさぎのための……物語じゃん……と呆然としました。
※ネタバレ込み推測
世界観がふわふわ謎がありすぎて永遠にもやもや考えてしまいますね、色々と……『不思議の国のアリス』という繰り返される物語を各々が何度も上演していたという真相ですが、OVA 1話を見るとこの『トリック・オア・アリス』の物語も繰り返している疑惑がある。黒うさぎルートに行くには全員のハッピーエンドを見ないといけないわけで、つまり黒うさぎルートのアリスは皆と散々恋愛をした挙句最後に行きつく場所と決められているような趣が色濃い。恋に落ちるはずがないアリスを完全に「亜理紗」として迎えるための下準備、だと考えると……ゾッとしますね。
誰も選ばずアリスになった主人公が行きつくエンドが【不思議の国の……】という名前で女王の胸に刺さるナイフをどうにかするとこで終わるのですが、それが黒うさぎの不思議の国エンド【女王アリス】に繋がるのがすごい。誰よりもアリスが一番酷く狂いそうで、黒うさぎはそれもまたアリスだと思ってそう。黒うさぎの学園ハピエンでみんな助けよう!ってアリスが言う時にナチュラルにハートの女王を省いてるのがほんと怖い。女王、立ち絵も可愛いし彼女だってしっかり登場人物なのにアリスがちっともその存在を重んじないのがほんと……【女王アリス】なんですよ……そりゃクロノを救えないよ…………傲慢なエゴイストこそが不思議の国の権力者に相応しいのだとしたら、アリスは確実にその素質がある。
一方黒うさぎは権力は無いけど作者に近い権限がある。その権限を用いて学園世界を作り、ひいては『トリック・オア・アリス』の結末を自分のハッピーエンドにした。黒うさぎが幸せになるための『トリック・オア・アリス』。恋愛を沢山楽しんだ主人公はもうアリスではなく「亜理紗」という、我々プレイヤーの視点で作られた夢主のような存在に他ならないのです。黒うさぎが「やっぱり 君が欲しかったと──」って言うあれ、アリスに呼びかけてはいるけど「アリスが欲しい」とは言ってないの、すごくない??? ナンセンス文学……ゲーム内ではアリスと亜理紗は同一人物ですが、メタ的に考えると別の存在(プレイヤー)になるのも面白いしデフォ名亜理紗の名前を変換するとより怖いかも。
学園世界の作られ方も謎オブ謎。黒うさぎが言うには『不思議の国のアリス』の読者の経験を使ってる?そうなので、日本の女子高生が読んでいる『不思議の国のアリス』から『トリック・オア・アリス』が出来たりしてるのでしょうか。アリスや登場人物たちが恋愛して性欲もあるのは読者の年代の思考や価値観が影響してるのかも……と考えたり。黒うさぎはともかくクロノの感情も影響する辺り、読者の感情も多大な影響を及ぼすのは確定っぽいですし。イケメンたちとの恋物語を夢見る女子高生に影響されてる?元々アリスは元気でおしゃまでちょっとわがままな女の子として書かれているのに亜理紗がおっとりした雰囲気と容姿なのも読者の影響込みだと思ったり。
そんなこんなでトリアリ、解釈も色々出来て楽しかった~!!BGMも可愛い。双子のBGMの違いいくらでも聞いていられる。あとはもう何と言ってもクロノ。クロノ可愛いよクロノ。勿論時任司も可愛い。ゲームクリア後にラブレターを貰えるのですが彼の「お疲れ様」が一番ご褒美だった。
「すがって得た愛の何が幸せなんだい!
強制的に愛してもらったって意味がないんだよ!」
「私は誰からも好かれてないんだ!
こんな私を好きになる人なんていないんだ!
そんなの最初からわかっているんだ!!」
……などの悲痛な叫びを!!聞いておくれよ!!
早 く 落 ち て き て 僕 た ち の ア リ ス
